この記事でわかること

  • 経理の月次の作業で、AIに任せやすいことと任せないこと
  • 始める前に決めておく、AIに入力しない情報
  • 締め作業をチェックリストにする頼み方
  • 前月との差を確かめる観点と、報告文の下書きの頼み方
  • 人が確認することと、電子取引のデータの扱い

月次の締め作業は、毎月同じ順番で進むことが多い一方で、確認の項目が多く、抜けやすい作業です。この記事では、AIに任せる範囲と人が確認する範囲を分けて、月次の作業を進める手順をまとめます。外部の決まりは、個人情報保護委員会と国税庁の公式の案内で確かめた内容だけを書きます。

この記事では、AIサービスの名前や料金は書きません。データの扱いはサービスごとに違うため、使う前に各サービスの公式の案内で確かめてください。AIの基本的な使い方はChatGPTを仕事で使う方法で紹介しています。

AIに任せやすいことと任せないこと

先に結論を書くと、AIには、出てきたものを人が確かめられる作業から任せます。 金額を確定させる作業や、経理上の判断は任せません。

作業 任せ方
手順の書き出し 下書き
差の確認の観点 案を出す
報告文 下書き
金額の照合 人が行う
証憑の保存 任せない
判断 人が行う

手順の書き出しや報告文は、間違いがあっても人が読んで直せます。金額の照合や証憑の保存は、間違えると後から戻すのが難しいため、人が行います。

始める前に決めること

AIを使い始める前に、AIに入力しない情報を決めます。

個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用について注意喚起を出しています。その中で、事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。

また、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、そのデータが応答の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反する可能性があるとされています。そのため、サービスを提供する事業者が、そのデータを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう書かれています。

経理のデータには、取引先の担当者の名前や、従業員の情報が含まれることがあります。次の3つを先に決めておきます。

  • 入力しない情報: 個人の名前、口座の情報、従業員の給与など
  • 使うサービスの確認: 利用規約とプライバシーポリシーで、入力した情報がどう扱われるか
  • 社内のルール: AIの利用について、会社で決まっていることがあるか

決まっていないことがあるうちは、実際の数字や名前を入れずに、手順や観点だけをAIに頼む形で始めます。

手順1: 締め作業を書き出してチェックリストにする

最初に、毎月の締め作業を、自分の言葉で箇条書きにします。順番が前後していても、抜けがあってもかまいません。

それをAIに渡して、確認しやすいチェックリストに整えてもらいます。次の依頼文は、実際の金額や取引先の名前を入れない形の例です。AIは作業の手順を整えるだけで、データには触れません。

経理の月次の締め作業を、
毎月使うチェックリストに整えてください。
下に、私が書き出した作業を
順番どおりでなく並べています。
実際の金額・取引先・個人の名前は入れていません。

- 預金の残高を確かめる
- 請求書の届いていない取引を確かめる
- 経費の精算を締める
- 売上と入金を照らし合わせる
- 前月との差が大きい科目を見る

次の形でまとめてください。
1. 作業の順番
   (前の作業が終わらないと始められないものを先に)
2. それぞれの作業で確かめること
3. 抜けやすい作業があれば、その理由
私の書き出しに無い作業を足すときは、
足したことが分かるように印を付けてください。

出てきたチェックリストは、そのまま使わずに、自分の会社の手順と照らし合わせて直します。AIが足した作業は、本当に必要かを自分で判断します。

手順2: 前月との差を確かめる観点を出してもらう

月次の数字を見るときは、前月や前年の同じ月と比べて、差が大きい科目を確かめます。このとき、AIには、差の理由を確かめるための観点を出してもらいます。

実際の数字を入れなくても、観点は頼めます。

経理の月次の確認で、前月と比べて
金額の差が大きい科目の理由を確かめたいです。
実際の数字は入れていません。
次の科目ごとに、差が出るよくある理由と、
理由を確かめるために見る資料を挙げてください。
・売上
・外注費
・消耗品費
理由を断定せず、
確かめる順番が分かるように書いてください。

AIが挙げた理由は、あくまで確かめる候補です。実際の理由は、帳簿や請求書などの元の資料で確かめます。

手順3: 報告文の下書きを任せる

確かめた結果を、上司や関係者に伝える報告文の下書きも、AIに任せやすい作業です。確かめた事実を箇条書きにして渡し、文章に整えてもらいます。

このとき、渡すのは自分が確かめた事実だけにします。AIに数字の意味を推測させると、事実と違う説明が入ることがあります。

人が確認すること

AIに任せた部分も、最後は人が確認します。個人情報保護委員会の注意喚起では、生成AIサービスの応答結果には不正確な内容が含まれることがあるとされています。

  • 数字: AIの出力に数字が出てきたら、元の帳簿やデータと照らし合わせます
  • 足された作業や理由: 自分の書き出しに無かったものは、必要かを確かめます
  • 報告文の事実: 渡した事実と違う内容が入っていないかを読みます

AIの出力をどこまで確かめるかの考え方は、AIの出力をどう確認するかで紹介しています。数字の集計そのものを自動にしたいときは、ExcelをAIで自動化する方法も参考になります。集計の仕組みづくりを外部に頼む場合の依頼の仕方は、ココナラでAI関連の作業を依頼する方法で紹介しています。

AIに任せるかの判断

迷ったときは、「間違いがあったときに、人が読んで気づけるか」で判断します。気づける作業は任せ、気づきにくい作業や、間違えると戻すのが難しい作業は人が行います。

電子取引のデータはそのまま残す

請求書や領収書をメールやPDFで受け取ったときの扱いにも注意します。国税庁の案内では、令和6年1月からは、プリントアウトした後に電子取引データを消さずに保存する必要があり、電子取引データが原本なので、そのまま保存するように説明されています。

AIで請求書の一覧を作ったり、内容を整理したりするときも、元のデータは消したり書き換えたりしません。AIで作った一覧は、元のデータとは別の、作業用のファイルとして扱います。

つまずきやすいところ

  • 実際の数字や名前をそのまま入力する: 入力しない情報を先に決め、決まるまでは手順や観点だけを頼みます
  • AIのチェックリストをそのまま使う: 自分の会社の手順と照らし合わせて直します
  • AIが挙げた理由を事実として報告する: 元の資料で確かめてから使います
  • 元の請求書のデータを整理したファイルに置き換える: 元のデータはそのまま残します

まとめ

  • AIには、出てきたものを人が確かめられる作業から任せます
  • 始める前に、AIに入力しない情報と、使うサービスのデータの扱いを確かめます
  • 締め作業のチェックリスト化、差を確かめる観点、報告文の下書きから始めます
  • 数字・足された作業・報告文の事実は、人が元の資料で確かめます
  • 受け取った電子取引のデータは、消したり置き換えたりせずにそのまま保存します